12月のシューベルト

 日曜の午後に~久しぶりに妻と銀座に出かけました。この日、久しぶりに2人で聴くコンサートがありました。
 コンサートがついでであるかのように、ちょっと早めに家を出て初冬の銀座の並木街を…みゆき通りから中央通りへぶらぶらーwindowショッピングの目の保養にとーちょっと照れながら妻と肩を並べて歩きました。
 7丁目の資生堂パーラーあたりから左(東)に折れて築地方面に向かい、行く先の目的地は朝日新聞社に併設の「浜離宮朝日ホール」。この辺りからは人通りも少なく休日のオフィス街といった佇まいで、ちょっとしたウォーキングコースです。暖冬とは言え冷たい風が頬にあたり、銀杏や枯れ葉が不規則に散って落ち葉となって、歩道を歩く先へ先へと不協和音を奏でながら乱舞していました。
 こんな日には何故かカレーが似合いそうと言ってインド料理店に入り、ナンを頬張り、シャキッとした気分でコンサート会場へ向かいました。この日のコンサートは、「田部京子ピアノ・リサイタル」です。
 田部京子さんの<浜離宮リサイタル・シリーズ20周年記念>という冠がついた、シューベルトをたっぷり聴かせる演奏会で、この日もオール・シューベルト・プログラムでした。
 即興曲作品90-1から始まり、晩年の、といってもシューベルト31歳の時の、ピアノ・ソナタ三部作のうちの2曲、19番、20番と続きます。前年に亡くなったベートーヴェンへのオマージュを感じさせる19番と、死を直前にした苦悩と焦燥感の狭間で刻む最期の希望の光と、あまりにも美しい歌が混在する20番です。
 この大傑作ソナタ2曲は、また、それを奏でる田部京子さんのこの日の演奏会は、枯れ葉の舞う年の瀬に深く染み入り、2024年への希望の光明を感じさせてくれる、回顧と希望の音楽として、この季節にふさわしい感動的なものでした。
 12月のシューベルト。深い哀しみの奥にキラリと光る歌と希望。ベートーヴェンの年末の第九の対極に置いておきたい。こちらも、僕には欠かせない明日への道標です。

2023年12月13日