ドン・パスクワーレ

 10月に開幕した新国立劇場の2019/2020シーズン・オペラの2作目のー、同劇場の新制作でイタリアからセットを持ってきたという、ガエターノ・ドニゼッティ作曲のオペラ「ドン・パスクワーレ」を観てきました。

 G・ドニゼッティはシューベルトと同年の1797年生まれで、イタリアの同時代のライバル、ロッシーニやベッルリーニなどが活躍する中で70作品ともいわれるたくさんのオペラをこの世に送り出してきました。中でも晩年の傑作、オペラ・ブッファの集大成ともいわれるこのオペラは、「面白くて滑稽で、哀しい」を感じさせる作品で、ドニゼッティが最後に到達した境地であるといわれます。

 ドラマは、若い女性をめぐっての偽装結婚や財産の移譲など、笑いあり・どんでん返しあり、早口言葉ありで、フィガロやセヴィリアを思わせる内容で音楽がドラマチックに展開していきます。このような150年以上も前に作られたオペラというー舞台芸術が、新鮮で、今の時代でも充分通用し楽しめるという不思議さと、有り難さを感じた一日でした。

 終了後に抽選の「バックステージツアー」が当たり、約1時間、舞台裏や舞台に立っての見学とスタッフの説明を受けることができました。さて舞台に上がると、何と舞台が6つもあったのです。(今いる舞台と、右に左に奥に一つずつ、そして上と下に計6つの立方体がー)いろいろな装置は勿論その大きさに圧倒されました。

 そして、1階から4階までの客席(約1600席)の空間を前に立ちスポットライトを浴びて、何故か不思議な感傷を覚えました。<神々しく、眩しく、呪術の世界に引き込まれるような・・>

2019年11月20日